「パパ、ちょっとお金が必要なんだ」
中1の娘に言われた一言。
次にくる言葉はすぐに想像できた。
「少しちょうだい♪」
思った通りだ。
どうせゲーセンで使いすぎたか買い食いでもしすぎたんだろう。
とはいえ、かわいいわが子のおねだりを断るわけにもいかず…
結局2000円渡した。
でも実際、何に使うんだろう?
このときはまだ、想像すらできませんでした。
まさかこの僕が涙を流すことになるなんて。
存在価値がわからない
「こんどは使いすぎるなよ」
「わかってるって~」
うちは理由あって娘と一緒に暮らしていない。妻が働くようになってから、妻の実家に住むようになったからだ。
僕も妻も家を出る時間が早く、娘の準備ができない。
娘は一人で起きて一人で学校の準備、朝ごはんを食べないといけない。
そんな生活はかわいそうだと、妻の実家に住ませるようになったのだ。
僕としては中学生になったわけだし、準備くらい自分でやれば?と思ったけど本人がイヤだと言うので仕方ないと思った。でも本心としては一緒に住みたいのだ。当然だけど。
中1になった娘は、次第に友だちと出かける機会が増えてきた。
娘のスマホには友だちと撮ったプリクラがビッシリと貼られ、ケースはベタベタにデコられていた。
たまに男の子二人、女の子二人のWデートもしているんだとか。…いやはや、信じられない。
ほんの少し前までは一緒に公園で遊んだりゲームをやったり。まだまだ子供だと思っていたのに。
月日の経つのは早い。
お父さんっ子だった娘はいつのまにか友だちと遊ぶほうが楽しくなっている。
そのうち「パパうざい」とか「パパなんか変なニオイするし」なんて言われてしまうのだろうか?
僕の子供の頃はどうだったのか?
昔から泣き虫でお菓子売り場で駄々をこねる僕に母はそうとう苦労したらしい。
中学に入ると母の親切がうざく感じるようになり、
「黙ってろよこのくそ○○!」
なんて、テレビドラマみたいなことも言ったことがあった。
「そんなこと…」
母はなにかを言いかけ、背を向けた。
たぶん泣いていたと思う。
母とケンカしたのはその1度だけだったが、今も心の奥に刺さって抜けない。
僕はそのうち、娘に同じことを言われるかもしれない。
言われても仕方ないし、言われて当然だと思っている。父として何もしてやれていないのだから。
そのときは僕も黙ってなにも言うまい。母がそうしたように。
僕に存在価値なんてあるのだろうか?時々自分自身がわからなくなってくる。
おこづかいはすぐに無くなる
次の日、娘からこう言われた。
「いや~、友だちと遊んで使っちゃった!」
思った通りだ。まったくこいつは節約するとか考えないのか?
「あ~そう。でも今月はもうないよ」
と言いかけたときだった。
パーーン
クラッカーの激しい音とともに、カラフルな紙テープが空中に舞う。
「パパ、誕生日おめでとう!」
あ…。
そうだ。
今日は僕の誕生日だった。
娘は僕に2つの箱をくれた。
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一方のプレゼントの中身は靴下と緑色のカメが描かれたTシャツ、そしてもう一方は木箱。
木箱の中には手作りのキーホルダーと1枚の手紙が入っていた。
普通に泣いてしまいましたw
こんなダメ親父でも祝ってもらえるんだな…と。
僕が20代のときに読んだ「生きがいの創造」という本があります。
本書は生まれ変わりや過去生に関するスピリチュアルな内容で賛否両論があるようですが、本文の母と子の会話の中に、こんな一文があります。
母
「ママがあなたを産みたいと思ったからあなたは産まれてきたんだよ。」
子
「違うよ!僕が自分で選んだんだよ!僕はパパとママの子供になりたいって思ったから生まれたんだよ」
※多少僕なりの言い方に変えてあります
うちの子も僕を選んでくれたのだろうか?悩んでばかりの男の元に。
30を過ぎた今でも自分の存在価値がわからない。
でも、パパの子供で良かった。
そう思ってもらえるように、僕は父として真剣に生きようと思った。